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備前焼の歴史・多彩な窯変
備前焼・その魅力
備前焼の歴史
備前焼は瀬戸、常滑、丹波、信楽、越前とともに日本を代表する六古窯の一つに数えられている。なお、産地の地名をとって「伊部焼」とも呼ばれている。
備前焼の歴史は古く、古墳時代より須恵器の生産を営んでいた陶工たちが平安時代から鎌倉時代初期にかけて、より実用的で耐久性を持つ日用雑器の生産を始めたのが誕生の時代といわれている。備前焼の魅力は飾り気のない素朴さである。釉薬を用いない渋い焼き上がりは、やがて堺、京都の茶人に認められるところとなり、桃山時代には茶器の名品が数多く焼かれた。
そして現代に至るまで苦難の時代を乗り越えながら、"製品"から、"作品"ヘと新たな芸術の境地が切り開かれてきた。今日まで約一千年の歴史の中で備前の街並の窯から煙ののぼらなかった日は一日たりとなく、金重陶陽、藤原啓、山本陶秀、藤原雄、伊勢崎淳の5人の人間国宝を生んでいる。
土と炎と人の出会いによって生み出される茶褐色の肌の風合は、約1300度もの高温で2週間も焚き続けられる窯の中で創造されるものである。現代社会で失われゆく自然と人間の心を甦らせてしまうような、神秘的でぬくもりのある素朴な美しさは、数多くの人々に感動を与え、愛好者は広く海外にまで及んでいる。他に例を見ないこの長い歴史と伝統、そして無限とも言える魅力をしっかりと受け継ぐべく、今日も300人余りの優秀な作家・陶工たちがこの備前の地に窯を構え、素晴しい作品を数多く世に送り出している。
備前焼の多彩な窯変
黒備前(くろびぜん)
古備前の時代に焼かれた備前焼の1つ。残っている当時の作品は少ない。近年、再現する技法が研究され、備前焼窯元の六姓の1つ森家の大窯や、著名な備前陶芸家の間でも焼かれています。
作家:伊勢崎淳
桟切り(さんぎり)
窯床においてある作品が灰に埋もれたとき、火が直接当たらないのに加え、空気の流れが悪くなりいぶし焼(還元焼成)になるために生じる窯変。ネズミ色・暗灰色・青色などがあります。
作家:松井與之
胡麻(ごま)
松割木の灰が熱で溶けて灰釉になり、胡麻をふりかけたような状態になったもの。胡麻の作品の多くは火の近くの棚の上に置かれているため灰が多く、これが流れた状態のものを“玉だれ”といいます。
作家:金重晃介
牡丹餅(ぼたんもち)
皿、鉢などの上に小さな陶土を置いて焼き、その部分だけに火を当てず赤い焼けむらをつけたもの。
作家:吉本正
緋襷(ひだすき)
白色あるいは薄茶色の素地に、赤い線があるもの。作品の間にワラをはさんだり、巻いたり、大きな作品はサヤの中に入れて直接火が当たらないようにして焼いたものです。
作家:山本出
青備前(あおびぜん)
サヤなどに入れられ特定の場所で強い火によってむし焼きにし、青灰色になったもの。食塩を使った青備前は、食塩青といいます。
作家:浦上光弘
窯変(ようへん)
通常は器物が灰に埋もれて焼かれた時に変化した景色をいいます。すなわち焼成中、埋もれた部分だけ還元焼成により、表面が黒、青、グレーなどのガラス状に焼けあがった発色で同じものがとれないのが特徴です。
作家:山本雄一
伏せ焼(ふせやき)
作品の上に別の作品をかぶせて焼くことにより、上下が異なった色に分かれているもの。作品の中には、間に挟まれたワラにより緋襷になっているものがあり、蕉徳利などに多く見られます
作家:木村宏造