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e-Bizen Museum <柴田錬三郎略伝6>

記事ID:0000546 更新日:2022年3月1日更新 印刷ページ表示 大きな文字で印刷ページ表示

柴田錬三郎略伝

東鶴山公民館

帰省時の思い出

久々井峠に建つ石碑

 私は、大学の頃、帰省する時は必ず、片上港から、巡航船に乗らずに、三里の峠越えをしたものである。(中略)
 私は、あの峠を思い出すたびに、きまって一人の少年の俤(おもかげ)を脳裡に甦らせる。
 たしか、大学二年の春であった。私は東京を前夜発って、うららかに晴れた午後には、峠の上に帰りついていた。

樹々の隙間に見えかくれして

 そのおり、ふかい渓谷に面した、尾根づたいのはるかな山径を、樹々の隙間に見えかくれして、登って来るひと影があった。(中略)
 私は微笑した、徳平だったのである。
 彼は、大学生の私の、故郷の村で唯一の友人であった。私が、釣に行く時、船を漕いだのは徳平であった。私が、奥座敷で読書をしていると、徳平は、縁側に音もなく忍び寄って、忠実な犬のように、一時間でも二時間でも、そこに蹲っていた。(中略)十五年前の話である。

久々井峠を下って西谷へ