昔、深谷というところに、木彦というわかいきこりが
住んでいました。四月には、めずらしい大雨がふって
きた。急いで家に帰るとちゅう女が倒れていた。木彦
はその女をだきかかえ家につれて帰った。元気になっ
た女は、「どうも助けてくれてありがとうございます。
私は美滝姫といいます。」と、おれいをいった。
やがて,二人は夫婦なった。月日がたって、美滝姫
はにんしんすることになった。いよいよお産の日が
近いづたとき、美滝姫は、「私は今日から産室にとじ
こもります。決して見ないで下さい。お願いします」
と何度もたのむので、木彦はしかたなく承知した。
ところが、夜ふけ、寝室のほうから大きなしん動が起こ
った。美滝姫に何か悪いことでも起きたのではないのか
と思い、そっと中をのぞいて,「あっ。」とばかりに驚
いた。
そこにいるはずの美滝姫は見えず、とぐろをまいた、
大きな竜が生まれたばかりの竜を抱き木彦をにらんだ。
木彦はあまりのおそろしさに気を失って倒れた。
そこに美滝姫が、生まれたばかりの男の子を抱いて座っ
ていた。美滝姫は「実は、私は竜なのです。私は天に帰
らなければならないのです。あなたから受けたご恩返し
にこの谷川には永遠に清水を流すことを誓います。」
と言うと、なにやら唱え始めた。
すると、青空がみるみるうちに曇り天地も叫ばんばかり
の大雷雨となった。
美滝姫と子供は、いつのまにか竜の姿に変わり、谷川の
奥へと向かった。木彦は、「美滝姫!美滝姫!」と叫び、
後を追っていったが、とても追いつけず、竜はけわしい
崖まで来ると棒立ちになり、岩をよじ登り始めた。
やがて、岩をよじ登った竜は、すさまじい光とともに,
黒雲にのって、天高く登っていった。
大雷雨のやんだあと、気がついてみると、竜がよじ登
った岩だけは、けづりとられて滝となっていた。滝の
下には、大小二つの深い滝つぼが、すみきった水をま
んまとたたえていた。
いつごろからか、上の滝は雄竜、下の滝は、雌滝
とよばれるようになった。深谷の滝のすぐそばに
うりう神社がある。これは、木彦が美滝姫をした
ってまつったものだといわれている。
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お わ り
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